【書評】ワークマン式「しない経営」

以前当ブログでもご紹介したワークマンヒットの理由

今回は、CIO土屋氏本人による著書。内容としては被る部分はありますが、付箋を貼った箇所は過去最多。非常にためになる本でした。

概要

競争相手のいる市場へはいかない

いまからユニクロのようなファストファッション市場へはいかない。高機能低価格ウェアで勝負。

ワークマンの主要顧客は、値札を見ずに買う職人が多い。これが究極の形。顧客との信頼関係が成り立っている。

値引きはしない。値引きは顧客への裏切り行為。

自社の市場の隣の市場を狙う

自社の強みを徹底的に分析する。市場を細分化すると参入できる市場が見えてくる。ただし、いきなり知見の無い分野へ参入すると失敗する。

よく、異業種へ参入して失敗と言う事例があります。なぜかIT企業が飲食に手を出したり、介護に手を出したり。複写機メーカーがカメラ・画像認識技術を活かして医療機器産業へ参入など、勝負できる分野へ進出ししましょう(流行ってるから・カッコいいからと言う理由ではだめです。そんな人はいないはずです、きっと…)

異常値の検知

だいたい売れ筋の商品はだいたい全国で平均的。ただ、想定を超える異常な売れ方をするものがある。防寒着がライダー向けに流行る、滑りにくい靴が妊婦にうける、溶接作業者向けのヤッケがキャンプ向けに売れる。実はブログやYoutubeでワークマンのユニークな活用方法を発信している人がいたため。その人たちにアンバサダーになっていただき、発信していただく。(無償で)

著書内では触れられていませんが、インフルエンサーマーケティングという立派な手法。

社員のストレスになることはしない

仕事の期限は設けない

締め切りを守ることが目的化し、質が下がる。その代わりやろうと決めたこっとは必ずやり遂げる。

残業しないように頑張れというのは経営ではない。

短期目標をいくつも掲げる会社ほどだめになる。

頑張ってできても意味が無い

特別出来る人や、死ぬ気で頑張った人だけしかノルマが達成できないようなやり方は、他人に引き継げない会社は個人の頑張りに頼らない。

実務を良く理解しているベテラン社員が抜けて、業務が滞るというのは良く聞く話です。

経営幹部は○○しない

  • 社内行事はやらない・飲み会廃止、酒が入らないと本音が言えない人は根本的に仕事に向いていない。
    →小山昇に聞かせてやりたい。
  • 経営幹部は極力出社しない。思いつきでアイデアを口にして、社員の仕事を増やさない。どうしてもやりたいなら自分で調べればいい。

上司は50%間違える

勘と経験が通用しない、不確実な時代になった。上司には50%間違えると公言させる。

データ分析は自社で

DXだデータ分析だとの流行の言葉あるが、社外からデータサイエンティスト、エンジニアを連れてくるのは最悪の一手。彼らは、技術には興味があっても、自社の実務にはまるで興味が無い。

実務に精通した人間に、Excelでデータ分析をしてもらう。

もしかしたら自分が主役になれるんじゃないかと自信を持たせる。

過剰に社外の情報を当てにしない

何でもネットで情報収集できる時代になったが、本当に価値のある情報は少ない。正しい情報を持っている人は自分でその情報を独占している。

所感

タイトルの「しない経営」と聞くと、ずいぶん楽をしているのではないかと思われるかもしれませんが、実際はその逆。無駄をそぎ落として考え抜かれた経営です。

特に響いたのは「社員にストレスになるようなことはしない」と公言されていること。金と時間と気を使うだけの飲み会や、評価にならない思い付きの調査などはその典型といえるでしょう。コロナ禍で飲み会が減ってコミュニケーションが減ったから業績が下がったという意見も良く聞かれますが、それは都合の悪い出来事に責任転嫁しているだけです。

また、「頑張らない」仕組み。仕事に命を捧げるモーレツ社員を基準にはできないが、多くの企業がそれをやってしまう。そして、そのモーレツ社員が辞めた後仕組みを一から作り直さないといけない。

著書内ではいいことばかりが書かれていますが、社内にはいろいろと問題があるはずです。それでも、今就職活動するなら入社したいなぁと思える会社です。

いろいろとやりたいことがあると思いますが、まずやらないことを決める・ストレスになることをしない・その代わりやると決めたことは必ずやりぬく。参考にしたいと思います。

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