【書評】聞く技術 聞いてもらう技術

少し話題になっていた本。著者の東畑さんは心理士という立場で度々新聞等に寄稿しておられる方。

概要

「聞く」のは「聴く」より難しい。日常の中で、話を聞けずに困っている人・話を聞いてもらえずに困っている人がいる。

なぜ聞けなくなるのか

「聞く」事が問題になるときは、伝えたいことがあるのに聞いてもらえないとき。

孤立と孤独

孤独は連鎖する。やがて孤立を生む。孤独に介入しようとする人は孤立する。

孤独には安心感が、孤立には不安感がある。

社会のあらゆる場所に対して「見える化」が求められている。心休まる場所が無い。

世間知と専門知

民間の世間知で実は多くのことが解決されている。(学校・家族・友達など)。世間知でどうにもならなくなったときに専門知の出番(カウンセラーなど)

ふつう

「普通こうするよね」「~するなんて普通じゃない」。こういう押し付けをしてくる人は大嫌いですが、いまや何が「ふつう」かわかなくなってきている。生きている人の数だけ「ふつう」がある。

誰が聞くのか

第三者がいい。まずはあなた=私が「聞く」「聞いてもらう」を始めよう。

スポンサーリンク

所感

冒頭から衝撃を受けました。「聴く」より「聞く」ほうが難しい。確かにその通りです。そうでなければ、面談や1on1で本音を「聴き」出そうなんて取り組みは必要ありません。「傾聴」だ「質問力」だなんて小手先のテクニックばかりがクローズアップされますが、職場や家庭内の普段のちょっとした会話のすれ違いが軋轢を生んでいる。これはなるほどなと思いました。

高齢者か若者か、ワクチンか反ワクチンか、出社かリモートか、飲み会か自粛か。お互いの利害が反発し合う中で、とげのある言葉ばかりが切り取られ、エスカレートした後に対立を深める。対立により、意見を認めてもらえなかった=聞いてもらえなかった側が、孤立し口を閉ざす。口を閉ざしたところに、聞こうとしても既に遅し、さらに対立を深めるといった構図が、このコロナ禍でも繰り返されてきました。

それぞれの事情を少しでも理解しようとする姿勢があれば幾分かはましになったはずですが、SNS等のメディアの発達で面白おかしい事象が切り取られ、ピックアップする世の中が社会の分断を助長しているようにも感じます。

「話せばわかる」はもう通じなくなってきている世の中で、どうすればいいか。著書内で明確な答えはありませんでした。が、まず私が第三者として「聞く」、当事者として「聞いてもらう」事が重要だとのことです。

聞いてもらえるような友人・パートナーが居ない場合には、まず「聞く」ことから。否定しない、「普通ではないよね」認めることから始める。どこの家庭や職場にも何かしら問題はある。面白がったり馬鹿にする人は論外ですが、まずは身近な人と「聞く」「聞いてもらう」を始めてみましょう。

タイトルとURLをコピーしました