【書評】失敗を語ろう

マネーフォワード代表、辻庸介さんによる著書。起業から上場に至るまでのヒストリーが生々しく語られています。

概要

起業の理念

「使っていれば自動的にお金のことが学べてお金が増えて、結果的の将来への不安が減り人生の選択肢が増える」そんなサービスが作れないか?

望まれないサービス

最初にリリースしたサービスは見事に大失敗。

「開発者目線」「提供者目線」に偏りすぎている。こういうサービスがあったらきっとユーザーが喜んでくれるに違いない(という勝手な思い込み)

ユーザーのためにといいながらユーザを見ていない滑稽な例。

ユーザー目線

ユーザーはきっとこう思うだろうという安易な決め付けは非常に危険。思わぬクレームとなる。

行動にこそ本音が出る

ユーザーを招いて、実際に操作しているところを見せてもらう。すると開発者としては思っていない行動をすることに気づく。

かといって、ユーザーの意見を聞きすぎて機能を詰め込みすぎてもかえって使いにくいシステムになってしまう。

謝る勇気

当初辻氏は、謝ることが怖く経営者は強くなければいけないと考えていたようです。理由はせっかく転職してくれた仲間に対して申し訳ないという心優しい考え方ですが、最近では考えを改めたようです。プロジェクトが失敗に終わりそう・辞めそうなときはメンバーは薄々感づいているもの。責任を取るのはリーダーですから、リーダーが自らの未熟さを謝らないといけないと。

こういう、経営者についていきたいものです。間違っても失敗の責任を担当社員に押し付けて、社員が退職するなんてことはやってはいけません。が往々にしてあるのが現状です。

急成長に伴う歪み

思ったことを口にしない

辻氏は何か思いつくたび「これいつできる?」「早くリリースしたいなぁ」と思ったことを言っていたそうです。エンジニアからすると「また面倒なこと言い出した。」「早くやらないと機嫌が悪くなる」と思い、現行進んでいる業務が滞り、生産性が著しく低下します。組織が小さいうちは良いですが、思ったことを現場に直接伝えると炎上するのでやめましょう。

リーダーシップ

トップダウン型はコストが安くて済むがそうはしたくない。どんなに組織が大きくなっても個人個人が自分の頭で考えて自主的に動く民主的な組織。

よく「自分で考えろ」とトップダウンでモノを言う経営者がいます。何もアイデアは生まれてきませんよ。

所感

辻氏は、ご自身のことを有能な社員ではなかったとおっしゃっていますが、そうはいってもソニーに入社後マネックス証券へ出向し、海外留学でMBAを取得している優秀な方(笑)

起業したものの、最初にリリースしたサービスが全く使われなかったという失敗からスタートしています。前述しましたが、「売れるに違いない」「自社で使って便利だから他社でもニーズがあるに違いない」と独りよがりな妄想により間違った事業展開を行ってしまう経営者が非常に多いです。原因はユーザーの求めていないサービスを展開してしまっていることなのですが、「営業手法が悪い」「もっと機能を追加しろ」「もっと客先訪問しろ」と売ることばかりに気をとられてユーザーを全く見ていない。辻氏は間違いに真っ先に気づいて、早々に第一弾のサービスから撤退。「多くの人に使ってもらうためにはどうしたらいいか」と考えるようになりました。

有能な経営者とは、強烈なリーダーシップでぐいぐい周りを引っ張って結果を出していく人のことを言うのではないと気づかされました。

辻氏のように

  1. 失敗を認めて軌道修正を図る
  2. ユーザに求められるにはどうすればいいかを考える

上記の考えが必要なのではないでしょうか?特にシステムの世界では昔の職人と同じく「いいもの」が売れると思われている方もいらっしゃいますが、どんなにいいものでもコストパフォーマンスが悪かったり、別の手段で代替できてしまうものは使われません。

私も今はマネーフォワードの家計簿アプリを愛用していますが、一度始めるともう辞められない(課金するかどうかは別ですが)そんなサービスが今後生き残っていくのではないかと考えさせられました。

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